まず呼吸としぐさの解説から。
むすびのしぐさで1,2,3と息を吸い、息を止めて1,2,3、ほどきのしぐさをしながら1,2,3と息を吐き、ゆっくりとむすびのしぐさに戻しつつ息を止め1,2,3。初めに戻る。これで一回。呼吸としぐさは連動しているので、バラバラにならないように練習する。
次に、この呼吸としぐさを意識と映像に連動させる。
まずは静かに目を閉じ、額のあたりに映像をうつす。
特別意図したものでなく、自然とその場で浮かんだもので良い。
大抵は日常的な空間や、記憶の断片などであると思う。
この映像と、それを知覚した瞬間の心の動き、体感など全てを含めて一枚の膜状のものと認識する。
むすびのしぐさの間、この膜をできるだけ強く維持し、味わう。
次のほどきのしぐさと同時に、幕が中央で裂け、カーテンのように勢いよく両脇へ退いてゆく様子を想起する。ほどきのしぐさの手の動きは、物理的に幕を両脇に払うように。
次のむすびのしぐさを作る頃には、奥からまた新たな膜が現れる。
この行ではこのようにして、幾重にも棚引く意識・記憶・感覚・感情の膜の階層を、呼吸としぐさで「めくる」ように移行するというものだ。一枚一枚、どんどんほどき、奥へ奥へと進んでゆく。
膜に投影される映像や感情は、どのように些末なものでも構わない。
浮かぶままに、膜をむすび、ほどくを繰り返す。
余裕があれば、息を吸いこむ時には水の、吐く時には火のイメージを重ねると尚良い。
赤と青、色のみでも構わないし、膜に投影する映像として火水のエフェクトをかけても構わない。
もし、そもそも膜に映像を投影することそのものが難しいのであれば、視覚の「覚」だけを額に移すようなイメージで、ぼんやりと額に重みを感じられるようにするだけでも良い。この場合は、映像ではなく、肉体の感覚やわき起こる感情の揺れに着目すること。
五枚、十枚と膜をめくる頃には、頭が重くなってくる場合がある。
この場合は、抗わず、頭がこっくりこっくりと動くに任せる。
身体の喜ぶように、頭を揺するなり、首を回すなり、それもしぐさの一部として、つなげてゆく。