ゆかりのしろは、すなたまししむらゆかりのひめひこの祭壇である。 すなたまししむらゆかりのひめひこは、三組のひめひこの中でも巫女にとって最も個人的な繋がりのあるひめひこであり、巫女の成り立ちを示すものである。

未来の巫女はまず、手頃な深さと円周の容器、手のひら程度の石を三つ、容器を満たせるだけの砂か土を用意する。 砂や石の種類や採取場所は、未来の段階では重視しない。都会に暮らす故にそれらを簡単に採取できない場合は、ホームセンターなどでペットの水槽用の砂利など購入しても良いだろう。

素材が整ったら、五行を歌いながら手のうつわで砂を容器に満たしてゆく。 充分な深さになったら、三石を円を描くように砂に深く挿す。

あまり小さすぎない砂の容器と石を勧めるが、この段階ではそこまで厳密ではない。 形状にもよるが、砂中に石の半分程度を埋めて固定したうえで砂上に親指程度の高さが飛び出るような状態が好ましい。しっかりと砂に根差すよう、挿してゆく。 この石それぞれが、すな、たま、ししむらのひめひこの依代である。

三石が整ったら、中央に赤紙で三角を作り、棒に固定し、上向きの三角になるように挿す。 この三角は、遠くない未来に巫女に灯る夢の火を象徴する。

出来上がったら、家の中の清らかな場所に据え、手前に小さな三つの器と蝋燭を灯す。 小さな器は、すなたまししむらへの供物である。毎日、または定期的に水や食事を供えること。

未来の巫女に夢の火が灯り、奔放の参入儀式を通過したら、火のうつわをゆかりのしろの上に据える。 この時、満たされた砂がすな、三石がししむら、うつわがたまのひめひこの依代となる。 日々の祈りや拝火のおりには、このうつわの上で女神から得た火と再会することになる。うつわを支えるひめひこに、日々心を配ること。

蠱惑の巫女になると、歩きの行を行う。 これは実際にさまざまな場所を旅して、土地や精霊、人々との交流の中で自身の祈りの術を磨いてゆくという行である。 この行の道中で、巫女は自身のすなたまししむらの依代にふさわしい砂と石を探し、手にいれること。 生まれ故郷の浜辺の砂や、学び深い体験をした森の石など。 これまでの巫女行のなかで磨いてきた様々の技術や経験を活かして、しかるべき石を得ること。またこの段階で、創造巫女のゆかりのしろに相応しい砂の容器や三石を整えるよう心がけること。

創造の巫女になると、三石の中央に火を入れる。火のうつわに水を注ぎ湯を沸かし、人々神々精霊の生まれ清まりの儀式を行うゆばなの儀の祭壇となる。ゆかりのしろが竈門として安全に機能するよう、うつわや三石の素材や強度に気を配ること。

この祭壇はこのようにして、少しずつ姿を変えながら未来、奔放、蠱惑、創造と、巫女行の終わりまで共に過ごすこととなる重要な道具であるため、心して整えること。

もし旧式の火水のうつわをすでに使っている巫女がいるなら、三角の依代を作るための紙で、丁寧に旧式の火のうつわをぬぐい、今までの功績を労いつつ、すでに宿る今までの数多の火を紙に移していく。もしそれでも、という強い思い入れのある火のうつわを使っている場合は、ゆかりのしろのすなの中に深く埋めてしまうのも良い。